「おばさん!やだなもぅー!」

そう言って、天音は、おばさんの話を軽く笑い飛ばした。

この国では、みな結婚が早いらしい。
16、17で嫁いだり、婿を取る人もたくさんいる。
早く結婚をして、子孫をたくさん残す。それが今のこの国あり方だった。
だからおばさんも、そんな事を言ったのだろう。
確かに、それなりに経済力のある婿を取れば、今より安定した暮らしを手に入れる事ができるのかもしれない。

「ハハ、結婚なんてありえない。」

しかし、おばさんと別れた天音は、またそう笑って歩き始めた。

結婚なんて、今の天音には全く現実味のわかない、まるで夢物語のような話だった。
そう、この時までは…。

天音は畑仕事一筋のじいちゃんと二人暮らし。
しかし、そんなじいちゃんとは血がつながっていない。
実は彼女は捨て子だった。
村の入り口に捨てられていた天音は、じいちゃんに引き取られ、育てられた。

そんな天音の家は貧しくて、着ているのはいつも同じ服。しかし、彼女はそれを不満に感じた事は一度もない。
こんな、どこの誰かもわからない自分を育ててくれたじいちゃんには、感謝しても、し足りない。