「あ、私、かこ!漢字は難しい華(はな)に子供の子ね。はなこって書いて華子(かこ)!もー 、この部屋二人かと思ったよー。よかったもう一人いて!だってこの人、全然しゃべらないからさー。」

そこから華子のマシンガントークが始まった。
華子は可愛らしい顔とは正反対に、本当によくしゃべる。
それは、おしゃべりだと言われる天音も驚くほど。

そしてまだ扉の前に立っていた天音は、部屋の奥へと目を向けると、確かに華子の言う通り、もう一人の人影を見つけた。
華子の言うように、この部屋はどうやら三人部屋のようだ。

そして、もう一人のルームメート椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらを向いた。

「…!!」

(うわ!!美人!! )

天音は、その美しい彼女を見て、思わず息を飲む。
その整った目鼻立ちに、シャープな目元。そして、茶色のウェーブの長い髪がとても美しい。まるでお人形のようだ。
華子もとっても可愛いと思ったが、彼女は別格だ。

「あ、今すっごい美人!って思ったでしょうー。」

唖然と立ち尽くしている天音の心の中を読み取った華子が、すぐに口に出した。
なぜ心の声がわかってしまったのか、そして、すぐに思った事を口に出してしまう華子に、天音はまた唖然としていた。

「いーよね。美人だといろいろ得だよねー。妃になるのだって、絶対美人の方が選ばれやすいだろうしー。」
「…ひがみ?」

華子が口を尖らせながらそんな事をつぶやいた。
すると、そこで美人の彼女が、眉をしかめて初めて言葉を発した。
落ち着いた声だが、どこか透き通るようなのびやかなその声に、天音は一瞬にして魅了された。 彼女は顔だけでなく、声も美しかった。

「ちがーーう!」

しかし、そんな彼女の声の余韻を消すかのように、華子がヒステリック気味に叫んだ。

「やっぱ、美人は何か冷たいんだよなー。それに比べてあなたは素朴だし、何か落ち着く!」
「は、はぁー。」

華子はニッコリ笑って、天音の手を取った。
そして、天音は困惑しながらも、とりあえず頷いてみせた。
そ、素朴って…どう意味だ?それって褒め言葉…?
そんな疑問を胸に押し込めながら、天音は華子のハイテンションぶりに、まだ慣れずに圧倒されっぱなしだ。