何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

天音は、ただひたすら歩き続けた。
半日以上が経過し、もう体はボロボロ。足の感覚なんてもうない。

そして、いつの間にか、夕日が天音を照らす時間になっていた。

「川だ…。」

朦朧(もうろう)とする意識の中で、それは突然天音の目に飛び込んできた。
サラサラと流れる小川は、小さな流れから、しだいに大きくなっていった。

『つめたーい。』

天音はこの川を知っていた。

タッタッタ

天音の足はまた、自然と走り出した。
そんな力など、もう残ってなどいないはずなのに。


「え…。」


そして、その光景に天音は言葉を失った。



…そこにあるはずのものがない…。



『リュウ、あの丘まで競争!』