何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

「あんたかい?輝夜村を探しているのは?」
「え?」

一人の老人が天音に話しかけた。

「知ってるんですか!輝夜村!」

天音は思わず立ち上がって、その老人の目を食い入るように見つめた。

「いや、知っているというか…。」
「何でもいいんです!教えて下さい!」

天音はわらをも掴む思いで、詰め寄った。
なんでもいい。
どんな些細な事でもいい。

「…それは伝説の中の村だよ。」
「え…?」
「輝夜姫の話を知っているかい?」
「え、はい。聞いたことがあります。」

その昔話は聞いたことがあった。
そう、それは、月からきたお姫様の話。
誰に聞いたかは覚えてはない。いや、たぶんじいちゃんだろう。

「ほう、若いのに珍しいな。その村は輝夜姫が住んでいた村だ。」
「え?」
「輝夜姫がいなくなった後、その村は輝夜村と呼ばれるようになった。そういう逸話があるそうだよ。」
「へ?」

それは、天音の望んでいた答えではなかった。
伝説の中だけの村。
実在しない村。
輝夜村はそんな村じゃない!

(ちゃんと私は知っているのに…。)
「どうやら、君の欲しかった答えではなかったようだね。」

天音の落胆した様子を見た老人は、悲しそうな目を向け、そんな言葉をかける事しかできなかった。

「…。」