何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

そして、天音も、そこから見える景色を目に焼きつけた後、ゆっくりと歩き出した。
今日も賑やかな城下町のメイン通りを歩いて行く。
ここに初めて来た時は、何もかもが新鮮で、輝いて見えた。
でも、今は違って見える。
もちろん賑やかなその場所は今も好きだが、それは、見慣れた光景へと変わっていた。
そして、メイン通りを抜けると、そこはこの町の入り口。
そこには、この町に初めてやって来たあの日の、試練の道も、あのお婆さんもそこにはない。

「あれ?りん?かずさ?」

しかし、その場所には、天音の予想しなかった二人がいた。

「今日帰るんやろう?」
「もしかして、見送りに来てくれたの!ありがとう!」
「もちろんや。なあ。」

りんは、今日もニコニコ、いつもの笑顔で答えてくれた。
そして、その隣にいるかずさは、何も言葉を発する事はなく、その目は天音をじっと捉えていた。

そう。全てがいつも通りだ。

「あのね、りん。調べたんだけど、帰り方よくわからなくて。でも、なんとか人に聞きながら行ってみるね。」

天音は村への帰り方について、図書館で調べてみたが、よくわからなかった。
どうやら、彼女の読解力では、まだ難しい本を読み解く事は難しかったようだ。
しかし楽天的な彼女は、なんとかなると思って、本から答えを探すのはすぐに諦めてしまったようだ。

「そうか…。」

りんはそれ以上は何も言わなかった。

「じゃあね。りん、かずさ!」
「おう。またな。」

そう言って、りんは手を振ってくれたが、やっぱりかずさは無表情で、その場に突っ立ったままだ。

そういえば、りんと会ったのも、この入り口だった。
そんな事を、天音は思い出しながら、この町の外へと足を踏み出した。