京司は、今日もこの場所へとやって来て、池の中をスイスイと泳ぎまわる鯉を、ただじっと見つめていた。
そして、その目の下には、微かに黒くクマができていた。
京司はある事について、調べつくした。
しかし、この城にあるありとあらゆる資料を見たが、探し出せない…。
この国の全ての情報はこの城にあるはずなのに…。
(そんな事はありえないだろう?)
そんな不安を抱えたまま、京司はこの場所を訪れていた。
彼女が、ここに来てくれるかはわからない…。
でも、今日会わなきゃいけない。だって今日は…。
「いた!」
そこに京司が待ち望んでいた、彼女が現れた。
京司にとってもそれは賭けだった。
天音が来るか、来ないか…。
「よかった!京司に会えた!」
天音は今日も、あの頃となんら変わらない笑顔で、京司に駆け寄った。
「今日…行くんだろう…。」
「うん!今日村に帰るんだ。」
天音は、京司のどこか寂しげな笑顔とは正反対に、嬉しそうに笑顔をふりまいて、元気よく答えた。
「よかったな。」
そう言った、京司のその顔はどこか複雑だ。
彼女の顔に笑顔が戻った事は嬉しい。
そう、それは自分が望んだはずなのに…。
「ここを出る前に、京司に会えてよかった。」
「…なんだか、本当にもう帰って来ないみたいだな。」
しかし心の奥底では、それを望んでいない自分がいる。
彼女はここを出たらもう、戻って来ない……。
そんな不安を拭い去ることは、京司にはできなかった。

