「こっちや!!」

りんは、町の人や医者を呼んで来て、もう一度電発塔へと走った。
この大雨で外には人っ子ひとりおらず、人を呼ぶのにかなり手間取ってしまった。

「え?」

りんはその光景を見て、息をのんだ。

「兄ちゃん、誰もいないけど…。」
「…。」

連れて来たうちの一人の男性が、周りをキョロキョロ見回しているが、そこには人っ子一人居ない。
そう、そこに居たはずの二人は、跡形もなく居なくなってしまった。
まるで、始めから何事もなかったかのように。

「何や、早いなー…。」

りんがポツリと小さくつぶやいた。
りんは、瞬時に理解していた。城の者が町民に気づかれる前に、二人を城に連れて帰ったのだろうと…。