「今日天音はあなたに、天使教に会いに行くと言っていました。その様子だと、まだ、天音に会ってないんですよね?」

辰と京司は、電発塔へと歩を進めているが、思ったよりも大量の雨で、なかなか辿り着けずにいた。
そんな中、再び口を開いたのは、辰だった。

「え…?」
「彼女は村に一度、帰りたいと言っていました。その事を、天師教に頼みに行くのだと。」
「村に…?」

京司は、しばらく天音とは会っていなかった。
あんなに妃になりたがっていた天音が、村に帰りたがっているなんて、彼女はいつの間に心変わりしてしまったのか…。
京司の心を黒い不安が支配し始めた。

「ええ。妃になる気持ちはあるようですが。」

しかし、どうやら、天音は妃を諦めたわけではないようだ。その事に京司は少し安堵した。

「おじいさんに会いたいと、言っていました。」
「…。」
「きっと、いろいろあって、心細くなったのでしょう。」

天音には、じいちゃんとあの村が全て…。
それは京司もよくわかっていた。

「あの子には、背負うべきものが重すぎる…。」
「え…?」

辰は、まるでわが子のように天音の事を語る。
そう、天音の事を、全て知っているかのように。

「このままでは、あの子はダメになる。」

(この兵士と天音は……。)
その関係が一体何なのか、京司は気になって仕方ない。