「お止めになってください!!」
宦官の叫びが廊下に、響きわたった。
「どうしたのです?」
この暗がりの中で、彼の声は思ったよりも響き渡っていたようで、その騒ぎを聞きつけ、皇后もやって来た。
停電になりもう30分程たったが、未だ復旧する事はなかった。
「ちょっと様子を見てくるだけだよ。そんな大騒ぎするなよ。」
そこに居たのは、宦官と京司だった。京司は今日も、うざったそうなうんざりした目で、宦官を見ている。
「危険です!天師教様!」
「宦官殿落ち着いて。で?天使教。何があったのです?」
皇后は、慌てふためく宦官を落ち着かせる言葉をかけ、何とか今の状況を把握しようと努めた。
「今のこの停電は、発電塔に雷が落ちたのが原因だそうです。」
仕方なくその問いに答えたのは、京司だった。
「電気の専門家は、今ちょうど他の町に行ってるって言うし、俺が発電塔に行って、ちょっと様子を見に行ってきます。」
「天師教?!あなたが発電塔を確認しに行くっていうのですか?」
皇后は、隣で騒いでいた宦官にも負けないくらいのすっとんきょうな声を出して驚いた。
「はい。」
この場でただ一人、京司だけが冷静な声を発していた。
「な、なにも、あなたが行かなくても!」
皇后が士官と同じように止めに入るのは、当然の事。
何もそんな危険な場所へ、天使教自らが行かなくても。普通の人なら、そう考えるのが当たり前。
「母上、俺が行きます。」
「え…。」
京司の目は、しっかりと皇后を捉え、落ち着いた声が響いた。
暗がりの中、ろうそくの心もとない灯が京司の顔を照らし続ける。
その真っ直ぐと前を向く彼の姿に、皇后は何も言えなくなった。
そして、京司は止めていた足を動かし、その長い廊下を歩き出した。

