何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】


「…。」
「お前が姉さんを殺したんだろ!!」

ザ―

青の声と風の音だけが、その場所に響き渡った。

「風花…。お前の弟はずいぶん生意気になったな。」

お墓の方へ向かって、月斗がポツリとつぶやいた。
“風花”それは、青の姉の名前。

「…。」

青は下を向いたまま、顔を上げる事はない。

「いいか、アイツ、天音には絶対関わるな。」

そう言って月斗は去って行った。


「お前に…何がわかる…。何もわかってないのは、お前なんだよ。」

青はまだ下を向いたまま、その言葉を吐き捨てた。
そんな青の足元で、月下美人が激しく吹く風に、煽られるように揺れていた。