「えー、ケチ!そうだ!天音。星羅すっごい歌がうまいんだよ。」

自分の事はあまり多くは語らない星羅に、華子は不満気に、口を尖らせていた。
しかし、突然名案を閃いた子供のように、ニッと笑ってみせ、星羅への腹いせとばかりに、彼女が今まで秘密にしていた事を簡単に天音にばらしてしまった。

「そうなんだ!」

天音はそれを聞いて、目を輝かせながら星羅を見た。
星羅のそんな新たな一面を聞かされて、なんだかとても興味が沸いた。
いつもはクールな星羅の歌声はどんなものなのか、とても気になる。

「ねえ、また歌ってよ!」

華子は、星羅に満面の笑みでそう言ってみせた。華子もあの日以来、星羅のあのきれいな歌声が忘れられず、またぜひ聞いてみたいと思っていたのだ。

「…そんな簡単に、人前では歌わないの。」

しかし、星羅はプイッと横を向いて相手にしてくれず、歌ってくれる様子など微塵も感じさせなかった。
歌う事を断ったのは、ただの照れだけではなかった。
そこには、星羅の決意がこめられていた。

「えー。ケチ。」

華子が不満気にまた口を尖らせ、ブーブー文句を言い始めた。

「ねえ、華子は?なんで妃になりたいの?」

そして、天音は当然のように、華子にもその理由を尋ねた。

「私?」

天音の方を、ニコニコしながら華子が見つめた。
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに。