「星羅は?」

しかし、華子は青ざめた星羅の様子に気づく事なく、何の気なしに、星羅にも妃になるその理由を尋ねた。
今までの、星羅の妃になりたいという気迫からして、何か大きな理由があるに違いない。
そして、好奇心旺盛な華子は、その理由を尋ねずにはいられなかった。

「え?」
「なんで妃になりたいの?」

華子に話を振られた星羅は、脈打つ鼓動を抑え、ふと我に返った。

(私がここへ来たのは…。)

「私は約束したの…ずっと昔…。」

そう言って星羅は、遠い昔に思いを馳せるかのように遠くを見た。
そして、自然と心が穏やかに戻っていくのを、密かに感じていた。

「約束?何の?」

しかし能天気な天音は、それが妃になる事とどう関係があるのかわからず、首を傾げて星羅を見た。
まさか妃になる事を、誰かと約束したとでも言うのだろうか?

「わ、私の事はいいのよ!」

自分でも無意識のうちに、そんな遠い昔の事を口にしてしまった星羅は、その場を取り繕うように、慌ててその話を終わらせてしまった。
(この話は他の誰にもするつもりなどない。そう決めていたはずなのに…。)