「やっぱ、ホンマやったんやなー。」
リーダーと反乱軍達は、この町を後にし、引き返して行った。
そして、天音と京司は城へと帰って行き、そこに残ったりんは、まだ辰に聞きたい事がるようで、その場にニ人だけが残っていた。
「それにしても、なぜ天音は天師教の事を知っているんだ?」
「…さあ、な…。」
辰が口にしたその疑問に、りんはわざと知らないふりをして見せた。
『天音は知らない…。俺が天師教って事を。』
りんはその言葉を自然と思い出し、この時ばかりは、深く考えてはいけないような気がして、その事実を見て見ぬふりをしてみせた。
それはまるで、開けてはいけないパンドラの箱に、そっと蓋をするように…。
「あの人を引き付けるカリスマ性は、母親譲りなんやろ?」
そしてりんは確信していた。その先に待つであろう、天音の過酷な運命を。
そう、天音の母親は、その昔、反乱をたった一人で率いた女性だった。彼女はみなにジャンヌと呼ばれていた。それは、約1000年前に彼女と同じ運命を辿った「ジャンヌダルク」から取った名前だと言われている。
りんも彼女の話は耳にした事はあったため、この話を簡単に飲み込む事ができた。
「ああ、それだけじゃない。」
辰は天音の言葉を聞いて確信していた。
「さっきの天音の言葉、あれはジャンヌの最期の時の言葉だ。」
「え?」
りんは辰の言葉に眉を思いっきりひそめた。
「天音は覚えているんだ。」
「…それは…。」
りんは、辰の言葉をなんとか整理しようと、脳をフル回転させるが、さすがにそこまでは思考が追い付かない。
「まさか…。天音はジャンヌの最期を見ていたっちゅう事か?」
「ああ…。」
振り向いた辰の顔を、夕日の赤が染めていた。

