ギ―

かずさが手をかけると、その仰々しい重い扉は不気味な音を立てて、いとも簡単に開いた。
それはまるで、天音の時と同じように…。

「ただいま。」

すると彼女は、まるで自分の家の部屋のように、ずかずかと部屋の中へと入っていき、ベッドの方へと声をかけた。

「おかえり。楽しかった?」

そのベッドに横たわる青が、弱々しい笑みを浮かべて、かずさに答えた。
当たり前のようにそのやり取りが行われている事に、なんら違和感はない。
それは、二人が顔見知りである事を表している。

「まあね。」

かずさは、少しだけ口端を上げたものの、そっけなくその一言だけで返した。
あの場にいたかずさは、反乱軍が引き返して行ったのを見届け、天音達の前に姿を現すことはなく、さっさとこの城へと帰って来ていたのだ。

「あなたも行けばよかったのに。」

かずさは、青のベッドの横の椅子に腰かける。
そこはいつも天音が座る場所だ。

「そんなに月斗に会いたくない?」

青をからかうように、かずさがわざとその名を口にした。しかし、この名前に青がどんな反応を見せるのか、かずさは知っていた。

「ちがう…。アイツは関係ない…。」

青がいつもとは違う、彼には似つかわしくない低い声を出した。
それは、かずさの想像通りのものであった。