「どうしたんじゃ?」
「聞きたい事があって。」
天音は、青の部屋を出た後も、やはり心のモヤモヤは解消されず、士導長の部屋へ足を運んだ。
「何じゃ?聞きたい事とは?」
士導長は今日も快く、天音を迎え入れ、聞く体制をとる。
「どうして、反乱は始まったんですか?誰がいつ考えたの?」
天音はいつしか、反乱の事が頭を離れなくなり、ついには反乱について、もっと知りたいと思うようになっていた。いや、知らなければならないと思った。じゃなければ、辰がなぜあんな事を言ったのか、その真意を理解できないと思ったからだ。
「んむ…。難しい質問じゃな。」
しかし士導長は、その質問に眉をしかめて、難しい顔を見せた。
その質問に簡単に答えるなんて、到底できるわけない。
「え?士導長様は何でも知ってるんでしょ?」
「ホッホッホ。私は何でも知っているわけじゃないよ。」
やっぱり無知で純粋な天音は、なんでも知っている士導長なら、すぐに答えてくれると思っていたらしい。しかし、そんな安易な考えは簡単に覆されてしまった。
「そうなんだ…。じゃあ、どうしたら反乱はなくなるんですか?」
それでも天音は尚も質問を続ける。
「これは、また難しい質問じゃ…。」
士導長はさらに顔をしかめ、低い声でそう答えた。
「…そんな答えがどこかにあれば、反乱は今起こってはいないじゃろうな。」
そして、士導長が真剣な声つきでそう言って、窓の外を見た。
「…そうですよね。」
確かに士導長の言う通りだ。これはそんな簡単な問題ではない。
天音は改めて、この問題の難しさを感じていた。
この世には簡単に答えが出る問題ばかりではない…。
天音はその事を初めて知った。

