何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】



「あなたはどうするの?反乱軍はもうすぐそこまで来てるわよ?」

彼に対してそんな言い方をできるのは、かずさしかいない。
そして、かずさの目の前に居る月斗は、今日も不機嫌マックスで、やっぱり威嚇するように、かずさを睨みつけた。
なぜか懲《こ》りもせず、かずさはまた、月斗の小屋を訪ねていた。

「あ?またお前かよ!たく何者だよ。」

月斗は、やっぱり威嚇するように、かずさを睨みつけた。
彼女が再び月斗の元にやって来た理由は、月斗には全く心当たりがない。その事がさらに、月斗を不機嫌にさせていた。

「あなたは、石が欲しいわけじゃないみたいだし、じゃあ、誰のためにこの国を壊したいの?」
「ハ?」

かずさは、まるで全てを見透かしたような口調で、月斗を挑発しだした。
そして月斗は、まんまとその挑発に乗せられ、ますます不機嫌な声を出す。

「まあ、いいわ。明日面白いものが見れるわ。午後四時この町の入り口に来て。」
「あ?何だそれ。」

どうやら、かずさはその事を伝えるために、ここまでやって来たようだ。
しかし、月斗は真面目に取り合おうとはしない。こんな素性のしれない女の言う事を間に受けるほど、彼もバカではない。

「来るか来ないかはあなた次第。」

しかし、意味深な言葉を巧みに操り、相手の興味を惹きつけるのは、かずさにはお手の物。それが彼女のやり方だと言う事をわかっていても、その言葉に誰もが引き込まれていく。

「お前…何を知ってる…。」

もちろん月斗も、かずさの事を警戒をしているはずだった。全てを見透かしているような、そのかずさの目を。
しかし、やはり彼女の言葉に、耳を傾けずにはいられない。

「…青いうさぎは、彼女のお気に入り…。」
「あ?」

かずさがポツリとつぶやいた言葉に、月斗は意味がわからず、また不機嫌な声を出し、眉をひそめた。

「この世には知らない方が幸せな事もたくさんあるわ。でも、それじゃあ、また大切なものを失うだけよ。それじゃあ、明日。」

そう言ってかずさは、そそくさと、その場を去って行った。
彼とまた明日会う事が当然。と言わんばかりの言葉を残して。

「…あの女。何知ってやがる。」

そんなかずさの不可解な言動に、月斗の警戒心はますます強くなるばかりだった。