何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

「反乱を止めて欲しい。」
「ハ?」

辰が開口一番言った言葉に、天音はまた眉のしわを増やすしかなかった。
唐突に言われたその言葉に、天音は何が何だかわからず、混乱するばかりだ。

「反乱?止める?私が?なんで?」
「反乱が今、各地で起こっている。この町にも反乱軍が来るという噂は知っているか?」

もちろんその話は、天音の耳にも嫌でも入っていた。
この城の中ではそんな話はご法度だが、町を歩けば嫌でもそんな噂話が耳に入る。
今日にいたっては、噂好きの華子がこっそりと号外を町で手に入れて、部屋に持ち帰って自慢していた。
(何の自慢かはよくわからないけど…。)

「聞いたけど…。」
「明日、この町にも、反乱軍の一陣が来るという極秘の情報がある。今、この反乱を止めなければ、大きな犠牲が出る。」

天音は口を尖らせ、観念して答えた。
辰はなぜかそんな極秘情報を、いとも簡単にただの妃候補の天音に話し始めた。
さっさとこの場をやり過ごそうと思っていた天音は、やっぱりその強い眼差しからは簡単に逃れる事はできない。

「…じゃあ、あなたが止めればいいじゃない。」
「…天音。君に止めてもらいたい。君しかいないんだ!」

天音は、そんな辰の熱い視線からなんとか逃れたいと、下を向いてモゴモゴとはっきりしない口調でそう言ったが、そんな天音と正反対に、辰はさらに熱く訴えかけてくる。