「奇跡があれば、何か変わるのかな…。」
「は?」

天音は自分でも無意識のうちに、そんな言葉をポツリとつぶやいていた。
しかし、なぜ自分の口からそんな言葉が出てきたのか、思いもよらなかった。そして、そんな自分に密かに驚いていた。

『奇跡の石があればこの世を変えられる』

それは、かずさのあの言葉を聞いたからだろうか。

「私、何言ってるんだろうね…。」

天音はなんだか昨日から、自分が自分でないような、よくわからない感覚に陥っていた。
そして、それは天音を簡単に混乱へと導いていった。
それはあの兵士と会ってからだろうか?

「ねえ、月斗。花火見たい。」

天音は唐突に、そんな事を言い出した。
自分へのモヤモヤした気持ちを拭い去るように、そんな事を口にした。

「は?」

月斗は天音のその言葉に、大きく目を見開いた。

「ね?お願い。」


『お願い。』



その言葉は何故か月斗の心に突き刺さった。


その言葉は忘れていたはずの、いや、忘れようとしていた言葉。



月斗は黙ったまま、俯いた。

「月斗?」

天音はそんな彼が心配になり、月斗の顔をのぞきこんだ。
もしかしたら、何かいけない事を口にしてしまったのかもと思案しながら…。

「わかった。」
「やったー!」

あんなに不機嫌だった月斗は、なぜか天音の唐突なそのお願いを断らなかった。
しかし天音は、そんな月斗の心の内など知る由もなしに、ただ単純に喜んでみせた。

「その代わり俺の頼みも、聞いてもらう。」
「へ?うん。いいよ。」

そして月斗は手放しに喜ぶあまねに対し、交換条件を出してきた。
しかし、天音は深く考えることなく、二つ返事でその条件を快諾してしまった。



ヒュー、バーン!!

そして、まだ夕方にもなっていない、明るい晴天の空に花火が彩った。