「天音ー!」
「え?華子?」

まるで時間が止まったかのように思えた、その一瞬を切り裂いたのは、天音の聞き慣れた声。その声に呼ばれ、天音は我に返った。
天音は、かずさの問いに、まるで闇にでもに引っ張られるような、不思議な錯覚に陥っていた。
そして気がつくと、いつの間にか、天音達は町まで戻って来ていた。

「探したんだよ!大変なんだってー!」
「へ?」
「てか、何してんの?誰?」

華子は、天音がりんと見た事のない女といる事に、思わず眉をひそめた。

「えっと…。」

天音は急にそう問われて、何と答えていいのかわからず、言葉に詰まってしまった。
かずさとの関係性を問われた所で、それに相応しい言葉は天音には見つけられなかった。

「天音、あなたは石を必要とする人間。あなたが石を見つけるのよ。」
「え…?私?」

かずさは華子に構わず、また石の話を続けた。

「え?何の話?」

華子には話が見えず、きょとんとした顔で、かずさを見た。

「まー、今日はこの位でお開きやな!また、時間に間に合わなくなったら、困るやろ?」

りんは、その不穏な空気を察してか、そう言って、この話を終わらせてくれた。

「じゃ、帰ろ。天音!」
「え…うん。」

そう言って華子は、急がせるように、天音の腕を引っ張った。
しかし、天音はかずさの話がまだ消化できないままで、後味が悪く、胸にモヤモヤが残ったまだった。

「行くよ。」

しかし、華子は何かに焦っているかのようで、天音を促した。

「あ、うん。ねえ、…かずさは、占い師?」

最後に天音が、どうしても気になった事を口にした。

———彼女はナニモノ?

「…それも悪くないかもね…。 」

そうかずさは小さくつぶやいて、天音に背を向けた。
これ以上は、何も聞くな。と言わんばかりに。