「私にはそんな石必要ないよ。」
「ハッハッハ。さすがやなー。」

りんが急に大声で笑いだした。
その様子に、かずさは眉にしわをよせて、天音はポカンとした顔でりんを見た。

「なぜ?普通の人なら、叶えたい望みを持っているものでしょ。」
「その望みに奇跡が必要なの?」
「…じゃあ、あなたの願いは?」

かずさが急に低い声を出し、それを天音に問う。

「へ?」
「あなたの望みは?夢は?」
「…それは、妃になって、村に戻って、じいちゃんと、村のみんなのためになる事をしたい…。」

詰め寄るように、かずさに問いただされて、天音はタジタジになりながらそう答えた。
そう、それだけが、天音のたったひとつの望み。

「確かにそれに奇跡はいらんなー。」

りんがそこでまた、ニッと笑った。
そう、天音にだって夢や望みはあるが、それと奇跡がどう関係するというのだろうか…。

「ちがうわ。」

しかし、かずさはなぜかそれを認めようとせず、冷たい声でつぶやいた。

「あなたの本当の望みは…。」

天音の苦手な、その全てを見透かしたような瞳が、じっと天音を見つめる。


「え…?」