「やっぱりな!ねーちゃんもそっち関係なんか!」

するとそこで、助け舟のように、あの独特なしゃべり声が天音の耳に飛び込んできた。

「あれ、りん?」

そう、なぜかそこに現れたのは、りんだった。
突然彼がここに現れた事に天音はもちろん、驚きを隠せない。

「天音が、この裏山の方に歩いて行ったのが見えたんや。何しに行ったんか気になって、ここで待っててみたら、まさか、ねえちゃん、じゃなくて、かずさと降りてきたんでびっくりしたわー。」
「りんも、かずさを知ってるの?」
「あー、即位式の日、たまたま知りあったんや!なあ。」

りんとかずさが顔を合わせるのは、即位式以来だった。
そしてりんは、もうとっくに気がついていた。
かずさの放つこのオーラから、ただ者ではないという事を感じていた。
しかし、りんのその問いに、かずさは何も答えず、目を細めて訝しげにりんをただ黙って見ていた。

「で?石の話聞かせてくれるんやろ?」

りんがニコニコしながら、かずさに話しかけるが、かずさは一切笑みなんて見せる事はなく、むしろ怪訝な顔を見せるばかり。
りんもどうやら、その奇跡の石を知っているようだ。

「奇跡の石はその名の通り、奇跡を呼ぶ。使う者によるけど。」
「奇跡?」

天音は、この奇跡という言葉に、いまいちピンとこないようだ。

「そう。」
「奇跡って何?」
「…さあ?それは人によって違うんじゃない。でも、その石があれば望みは叶う。」

(人によって違う…?なんだそれ?)

天音は、かずさのその言葉に、ますます分からなくなってゆくばかり。
なぜ、そんな石の話をかずさがしだしたのか、分からない。そんな分からない事だらけで、天音は困惑の表情を浮かべている。