「あれ?こっちだっけ?」

人の能力というものは、そう簡単には変わる事はない。
やっぱり天音は、裏山の帰り道で迷っていた。

「こっちよ。」

こんな人気のない場所で、幸運にも天音に話しかけてきた人物がいた。

「あれ?あなた…。」

しかし、その声の主を見て、天音は眉をひそめた。
その時声をかけて来たのは、城で出会った、不思議な雰囲気を持つかずさだった。
なぜ彼女がこんな所にいるのだろうか…?その疑問は当然のように頭に浮かび上がる。

「彼に、月斗と何を話す事があったの?」
「え…?」

天音の鼓動がドキリと波打った。

…もしかして、後をつけられてた?
人を疑う事のない天音にも、そんな考えが、脳裏をよぎった。

「奇跡の石…。」

かずさがポツリとつぶやいた。

「へ…?」
「奇跡の石があれば、この世は変えられる。」
「き、きせきのいし?」

突然、かずさから発せられたその言葉に、天音は首を傾げた。
そして、聞きなれないその言葉を、ただ繰り返して言葉にしてみたが、天音の頭には、はてなマークが並ぶばかり。
訳の分からない話を唐突に話し始めるかずさに、やっぱり天音はついていけない。