「何が…不満なの?」
「あ?」
「何が望みなの?」

そして天音は、その理由を知りたかった。

「は?そんなのお前に言ってどうする。」
「私に何かできる事ある?」

天音の必死な瞳は、月斗を捕らえて離そうとしない。
そして月斗は、知っていた。天音と同じこの瞳を持つ人間の事を…。

「もう、気がすんだろう。帰れ。」

月斗は天音のその視線から逃れるように、そんな言葉を吐いてプイっと横を向いた。

「花火…。」

しかし、天音の口はその動きを止める事はない。

「花火また上げてね!」

天音はニッコリと笑ってその言葉を言って、その場を去った。
どうしても、それだけは伝えたかった。
なぜだか、あの花火だけは、天音の心を捕えて離さなかった。



「くっそー!」

天音の去っていた後、月斗はその場にしゃがみ込み苦し気な声を上げた。
天音のその瞳は、月斗のよく知る人にとても似ていた。
それは、どこか強く真っ直ぐで迷いのないその瞳。
()()()()の事を思出すだけで、月斗の心は大きく揺さぶられていた。