「どうしたの?
早く読み上げてくれないと、登壇できないんだけど」

ステージの端でマイクを持つ私の背後に現れたその警察官。
うっわ、本人だよ。
まさかこんな形で大学に来るなんて、考えてなかった。

い、今からここで話すの?
冗談でしょ。聞いてないってば。
今すぐ帰りたい。
司会なんて、引き受けるんじゃなかった。

もう、やるしかないんだろうけど…。
教授、私には難しすぎる案件です。

「えー…っと。
警察官の蒼井楓馬さんにお話をしていただきます。
護身術も教えてくださるとのことなので、皆さん、身に付けて帰ってください。
それでは蒼井さん、よろしくお願いします」

紹介を終えると、横からマイクをかっさらっていった。
彼が登壇すると、会場がざわついた。

そういうことね。
ここに来た学生のほとんどが、駅前のかっこいい警察官を見に来てるんだ。