私は、泣く泣くさっき歩いてきた道を逆戻りするはめとなった。

会ったら何て言ってやろう。
勝手に人を引越しさせて。強引にもほどがある。

二度と見ることはないだろうと思っていた玄関。
絶望的な気持ちで中に入ると、腕を組んだ悪魔が待ち構えていた。

「やっと戻ってきた。
どう?家の方はちゃんと片付いてた?」

この男…。

作り笑顔もできないくらいにムカつくな。
歯が削れるくらいに噛みしめる。

「それは、もう綺麗さっぱりと。
住めないほどに!」

「なら良かった」

「どこが良いんですか。私の荷物早く返してください!
勝手に部屋引き払って、どういうつもりですか!」

ここまでくると、怒りもピークに達し、胸ぐらを掴んでやった。
反撃しないとでも思ってんの?
そんなはずないでしょ。
私を怒らせたらどうなるか、見せてあげようじゃないの。

なんて、息巻くのは脳内の私だけで、現実では全く動揺を見せない彼に意気消沈。