「藤田さん、部屋の鍵返してもらっていいかな」

「え…。
いや、これは何かの間違いでして、すぐにまたここに住みますよ、私」

「いやいや。新しい職場も決まってるんでしょ?引越し先の方が良さそうじゃないか。
それに、ここはもう次の住み手が決まっててね。
どうせ鍵は付け替えるから、返してもらえないなら藤田さんの方で処分してもらっても構いはしないんだけど、どうする?」

だー、もう!
何もかも最悪だ!
全部あのとんでも警察官のせいで!

「わかりました。返しますよ」

そう言いながらも、鍵を持つ指に力が入る。
返したくない。
行き場がなくなる。

でも大家さんも譲らない。
一気に力を入れた親さんによって、私の家の鍵はあっけなくその手から引き抜かれてしまった。