「うっ…」

逃げ遅れると、こうして掴まって身動きがとれなくなるから。
もう後がない。

「待って…」

「嘘つき」

首筋に彼の唇が触れる。
くすぐったくて、刺すような痛みが走る。

嘘じゃない。
嘘じゃない…。

いや…、嘘かもしれない。

本気で抵抗しようと思えば、彼を突き飛ばすことくらいできるのかもしれない。
でも、それをしようとする気力が起こらない。