口の中でとろけて、濃厚な味わいが広がる。
フォアグラを使った料理なんて初めて食べた。

「んー!美味しい!」

こんなに美味しいものを食べさせてくれるなら、ここに連れて来られたのも良かったと思えるかも。

…いや、騙されるな、私。
これくらいで、喜ぶな!

でもやっぱり幸せかも。

「なんだか、食べにくいな」

隣で愚痴を言うのは、夕食中の蒼井楓馬。
そりゃ、食べにくいはず。

彼は利き手である右手に手錠を嵌めている。食べようと手を動かすと、私の左手もついてくる。

「反対の手にしとけばよかった」

「手錠を外せばよかったんですよ?」

手錠を嵌めながら食事をしてるなんて、どんなにおかしな光景なんだろう。