電話を掛ける。しばらくして聞こえてきた声の主はななみん。
ただ一言、今日は楓馬君の家に戻ることを伝え、電話をきった。

頑張って、と励ましを受けて。

それからまとまらない頭のまま、屋敷へと向かった。
それなりの距離があったはずの道なのに、あっという間についてしまった。

そっと。
そーっと玄関を開ける。

まずは神谷さんか咲さんに会えれば、どうにか楓馬君に遭遇せずに済むかもしれない。その間に楓馬君になんて言い訳をするかを考えられる。

最悪なのは、真っ先に楓馬君に会ってしまうこと。

玄関の向こうには、ちょうど咲さんがいた。