「あー、これ結構便利だな。
ほらついておいで」

そんなペットみたいに言わないでよ。

「だから、結構です!」

「抵抗しても意味ないのわかってるでしょうよ。
手首痛めるだけだよ?」

そんな風に言われたって、抵抗を止めたくなんてない。
知らない男性と手錠で繋がれた状況で、夕食を食べていられる余裕があるほど、私は図太くないのよ。

「ここから動くつもりありませんから」

意地でもなんでもいい。
私が本気だってとこ、見せなきゃ。

鎖をぎゅっと握って、彼の力に対抗しようと強く引いた。

あれ、軽い…。
思ったよりも簡単に引くことができた手錠。

…ってことは。

「ふーん。
動く気ないんだ?」

なんで、こんなに近づいてんの?
気が付いたときには至近距離に迫られていた。