「アハハ、下手だね。
護身術も曖昧な知識だと相手を有利にさせてしまうってことだ。

なぁ、こんな大勢の前でくっついて来てもいいの?
あの後輩くんも見てるのに、大胆なことするんだね」

くっついてるなんて変な表現しないでよね。
護身術を練習してるだけなんだから。

でも、そんなことを言われてしまったばっかりに、つい触れた腕に意識が集中してしまう。

これは…、罠だ。

いや、こうなったら、このシチュエーションを良いように使ってやる。
人の痛みをわからない人間には、まずはその痛みを教えてあげないと。

「不審者は、何しでかすかわからないんですよね?」

足を一歩引いて、踏ん張ってから右手を目一杯振りかぶる。そこから顔面に向けて渾身の一発。

まさか本気で殴りかかられるなんて想像もしてないでしょ。
がら空きなのよ!