―――――アサガオ

 ペンキ屋が険しい表情を一瞬浮かべた。

眩しげな海原を見つめた後、アタシを確認するように顔を戻し、とても冷たくてとても恐ろしい視線を一瞬向けた。

アタシは背筋に冷ややかモノを感じる。


「―――俺と話がしたいか?」


『え?』


 ペンキ屋の予想しなかった言葉にアタシは戸惑う。

そしてペンキ屋はまた、さっきアタシのカニピラフの蟹の身をほぐしてくれた時のような表情を浮かべ、穏やかな声で「俺と話がしたかったんだろ?」と聞き直してきた。


『・・・うん』


アタシはシドロモドロになりそうな意識を集中して精一杯の応えを返す。


「じゃあ話せよ」


『話せって・・・』


「話さないなら、さっさと飯食い終わらせて出るぞ・・・」


『待って!!・・・話すよ・・・話すけど』


アタシは馬鹿な頭を振るうけど、さっきのペンキ屋の表情に酷く動揺していたみたいで、ペンキ屋と何が話したいのか分からなくなってくる。

それどころか、何故ペンキ屋と一緒に時間を過ごしたかったのかの判断も不鮮明になってきてしまいそうだった。


「おしゃべりは終りか?」


 ペンキ屋が少し意地悪に口元を上げて聞いてくる。