―――――ペンキ屋



「―――繰り返します・・・蟹ピラフのランチセットが、ドリンクはアイスコーヒーでおひとつ。よくばりフライセットが、ドリンクはアイスティーでおひとつ。・・・ドリンクは食前でよろしかったですか?」


『あぁ・・・』


「―――かしこまりました少々お待ち下さいませぇ」



 ・・・俺はホントに何をしている。

 何で素直に飯を食いに来てる?

 日中は目立ち過ぎる?

 本当にそれだけか?

真昼間に仕事した事は何度もあるだろ?


 今日は本当に調子が悪い。

朝から、やっかいなオヤジと会ったのが、ケチの付き始めだ。


「―――こうゆう所で御飯食べるの久しぶりぃ」


 この女は、何をそんなにニコニコしていやがる?

頭のネジが足りないのか?


「ねぇ・・・ペンキ屋で良いんだよね?」


『・・・何が?』


「いやっ・・・何て呼んだら良いのかな?って」


『好きにしろ』


「―――じゃぁペンキ屋」


 ホントに調子が狂う。


「ねぇペンキ屋」


 正直付き合ってられねえ、俺は窓の外を見たまま、女の言葉に反応しない。

 もうすっかり、太陽は真上近くまで上がっている。

夏のソレ程じゃねえが、それなりの日差しが海辺のレストランに差し込んでいる。

 俺は女の話に聞く耳を持たず、ただキラキラと波打つ海を眺める。


「ねえ!!ってばぁ」


『・・・っるせえなぁ何だよ?』


 俺は根負けしたように女に反応する。

女は俺が顔を向けるとニコリとしやがった。

 馬鹿らしいが、これ以上ウルサイのは勘弁してほしい。