20分程すると、くたびれた顔をしたオヤジが俺の前に立っていた。

 情けない事に、俺は痛みを堪える事に必死になっていたらしく、オヤジが目の前に近付いて来た事すら気が付かなかった。



「中島さんかい?」



『・・・あぁ』



「―――大丈夫かい?アンタ?油汗かいてるぜ」



『大した事じゃ無え』



「・・・そうかい、・・じゃぁ行こうか?」



 俺はオヤジに導かれるまま、駐車場に停めたミニパトに向かった。



「悪いねぇ狭いだろう?いつもアンタらの乗ってるセダンとは雲泥の差だろ?・・・あっアンタらはクラウンだったかな?」



『あんた・・・交通課だったか?』



「いや・・・俺は生安だが・・・俺を知ってるのかい?」



『いや、交通課じゃなかった気がしただけだ』



「俺はアンタを知ってるぜ、まっもっとも噂でだけだがな」



『・・・噂?』



「ボロ雑巾・・・アンタが陰で呼ばれてる名前だよ」



 オヤジは表情一つ変える事なく、淡々と話しながらシートベルトを締めて、ミニパトのエンジンを掛けた。



『悪いが・・・今日はそんなボロ雑巾に付き合ってもらうぜ』



「あぁ構わんさ」



 オヤジは相変わらず表情を変える事無く淡々と車を走らせ始めた。

 そして駐車場から道路へ出る時に左右を確認しながら俺の方を見た。



「・・・噂とは違う様だな」



『・・・何がだ?』



「ボロ雑巾にしては気持ちの入った目付きだ」



『・・・そうか?』



「あぁ・・・俺は木村だ生活安全課の木村」



 そう言って木村は俺にタバコを差し出した。