―――――中島



 俺は看護師が止めるのも聞かずに点滴を外しベットから這い出る。

 病室に残っていた同僚が間抜けな面をしたまま「どうしたんだよ?」「おかしくなっちまったのか?」と俺を止めようと俺に問い掛けてきた。

俺がこの街に来てから一度も見せた事の無い行動に同僚は酷く慌てている様だった。

俺は痛みに耐えながら同僚の腕を振り払う。



『俺の刺された場所に連れてってくれ』



 俺の顔を覗き込みながら同僚は間抜けな顔を浮かべたまま黙って頷いた。






「みんな現場や検問にかり出されて空いてる車が無えらしい・・・」



 同僚は困った様に携帯を切り、俺をさとす様な口調で言った。



『・・・じゃぁ悪いがタクシー手配してくれるか?』



 病室を無理矢理抜けて、俺は総合病院のただっ広いエントランスの長椅子に痛みを堪えながら座り、同僚の顔を見る事無く言った。



「・・・あるにはあるんだが、交通課のミニパトでも良いか?」



『なんでもいい・・・兎に角俺は・・・俺と若造の刺された所へ行けりゃぁいいんだよ』



 そう俺が言うと同僚はまた困った顔をしながら携帯をかけて、ミニパトを手配し、面倒な奴から逃げる様に俺をエントランスに残したままそそくさと立ち去った。