居心地の悪いシートに、俺は落ち着かないまま自分の部屋の前に着いた。

 自分で言うのも何だが、殺風景な部屋の鍵を開ける。

そして俺は殺風景でブラインドで日差しの遮られた暗い部屋の無愛想な金庫の鍵を開けて金を取り出しテーブルの上に置き、ウォークインクローゼットの中から御あつらえ向けのバッグを探す。

だがクローゼットの中で片手に収まる五百万の束を入れるのに理想的な大きさのバッグがある筈も無い。

俺はTシャツか何かを買った時の洋品屋のビニール袋に五百万を入れた。



 俺は今日は仕事が終わったら帰って来て、すぐに眠りに就くつもりでいた。

だが生憎と今日はこの後に用事がある事を思い少し気が落ちた。

 俺は渋々とブラインドを開けて部屋に日を入れる。

溜め込んでいた物を吐き出すように光は部屋に差し込んだ。

 俺は眩しさに目を細める。



『俺は何をしているんだ?』



 俺のバランスが崩れている事に、俺は気付かぬ振りをしていたが、意識を失いそうになる程眩しい日差しが、俺に無理矢理事実を突きつける。



『何故、俺が女と飯を食わなけりゃならない?』



 少し浮ついた気持ちになっていた自分に腹が立つ。

そして俺は急にヒドイ喉の渇きを覚えて冷蔵庫に向かう。

 冷蔵庫の中を開けて缶ビールを取り出し一気に喉奥に流し込む。



 自分の気持ちの整理も付かないまま、イラつきながら俺は部屋を出て車に向かう。

 マンションの前に止まっているここまで乗ってきた右ハンドルのミニにもう一度乗るかと思うと俺は更にイラついた。



 女と食事をするのも馬鹿らしく腹立たしいが、俺は約束を破るのが嫌いだ。

 だから車屋に金を渡し、新しい車を受け取ったら約束通りに女に食事をご馳走しよう。



『殺すのはその後でいいだろう』



 あの女は俺のバランスを壊した。