―――――ヤマモト



『木村さんよ、要は俺にそのもう一丁のスミス&ウェッソンを回収しろって言いてえのか?』


 ウェイトレスが注いだ二杯目のコーヒーを、ズビリと音を立て、相変わらずムカつく顔で啜る木村に、俺は苛立ちを全面に押し出して問う。

木村は勿体ぶるように此方を眺め、カチャリとソーサーにカップを戻しながら、これまたムカつく満面の笑みで満足そうに頷く。


「飲み込みが良いねえ、やっぱりヤマモトちゃんは・・・デキる男は流石に違うねえ」


『馬鹿にしているようにしか聞こえねえな・・・』


「何言ってんだよ?本心だよ本心だよ」


――木村の態度はつくづく俺を苛つかせる。


『悪いが・・・断る。俺はアンタにそんな義理はねえハズだ。それに、前にアンタには一課に優秀な兄弟が居るって聞いた事があるぜ。ソイツに何とかしてもらうんだな』


「弟の事か?・・・あぁ~ダメダメ!弟は親父に似て堅物でよお、下手すりゃ俺ですら逮捕しかねねえよ」


木村は苦笑いを浮かべながら、大袈裟に手を振って言う。


『弟が駄目だとしても、アンタにゃ他にも内部にコネは有るんだろ?』


「まあ、無いことも無いがな・・・」


木村は、また勿体ぶるように此方を眺め、ソーサーに落ち着いていたコーヒーカップを手に取り、ズビリと音を立て啜った。