―――――京子



 1日数回のバスの往来で僅かに出来た轍が、唯一の目印と言える森の間を縫うようにできた未舗装の道を、アタシは目一杯に踏み込んだアクセルでトラックを走らせる。

街から大分離れ、サイドミラーに追いかけてくる車や人影も見えないけれど、減速した途端にサイドミラーに映り込むかもしれないソレ等の砂煙を恐れ、一種の脅迫観念のように脚から力が抜けない。


「・・うっ・・うぅ・・」


アタシがもう数十回目になるサイドミラーの確認をした時、助手席でうずくまり動かなくなっていた白人男性が低く唸った。

 正直なところ、彼を最初に見た時に助からないと思った。

そしてトラックを走らせ出した後、横目に見える夥しい量のシートに染みた血と、動かなく彼を見て、絶命したと思っていた。


『だ・・大丈夫?』


彼の唸り声は、アタシの意識をサイドミラーから彼へと移した。


『・・・待ってて』


アタシは踏み込んだアクセルをゆっくりと抜き、ブレーキペダルへと脚を乗せ換え、そして今度はブレーキをゆっくりと踏み込み、路肩の木陰に向けてトラックを減速させる。


「――どうした?」


バカオトコが荷室から運転席を覗ける小窓を開けて、アタシに無愛想に確認する。