「オヤジ・・・これ以上話した所で解決にはなりませんよ」


ヤナギは俺に向かって、寺の坊さんみたいに落ち着いた諭すような口調で話す。


「・・・それに」


『ん?』


「面倒な奴も来ましたし・・」


ヤナギはそう言って、俺の後方にある入り口の方へ目を向ける。

俺は体を捻るようにして、ヤナギの目線を辿り、入り口の方へと目をやる。

安っぽい色のさめたジャケットを着た、見慣れたクソ野郎が、入り口からコチラに向かってニヤけながら歩いて来ていた。


『―――くそっ!!疫病神がっ!!』


ニヤけ面のクソ野郎は、俺の数メートル手前から、いけ好かないニヤけ面を浮かべながら、白々しく手を振り近付いて来た。


「―――ヤマモト、何の悪巧みだ?」


男は、立ち上がったヤナギを割って入るように、俺の対面へとストンと腰を落とす。


『悪巧み・・・って、子分と深夜のコーヒーを楽しんでただけですよ』


「そうかい」


警視庁生活安全部の木村。

ヤナギの言う通り、俺達の稼業にとっちゃ面倒な人間だ。

だがコイツを面倒と思うのは、他にも理由がある。


『木村さんこそ何してんですか?・・・だいたい生活安全部の刑事さんは、こんな夜中まで働いてないでしょう?』


「・・・野暮用でな」