「オヤジ・・・美山のオジキに頭下げる事は出来ませんか?」


『バカヤロー!!俺が何の義理で美山の野郎に頭下げるんだよ?!』


「・・・でしょうね」


ヤナギは伏せ目がちで呆れたように、溜め息混じりに言葉を吐く。

俺は「頭を下げる」って言葉が出てきた事に無性に腹が立ち、安っぽい合皮のソファーにふんぞり返るように背を預ける。

ヤナギは俺のそんな様子に更に深く溜め息を吐く。


「・・・オヤジ」


『何だよ?』


俺は大人気ないが、ふてくされたガキのような口調になる。

理不尽な苛立ちの捌け口が言葉の語尾に重なる。


「・・だったら」


ヤナギは諭すような口調で言葉を重ねる。

 正直な所、ヤナギは俺よりも数倍賢い。

コイツが俺の舎弟になってから、色々な意味で俺は何度も救われた。

俺はこの性格だから、素直に感謝した事も無いが、俺はヤナギを信頼している。

ヤナギの言葉に期待している。


「高島のオジキに相談してみてはどうですか?」


ヤナギは静かに言葉を並べ、俺を常に成すべき事へと導いてくれる。


『高島のオヤジかぁ・・』


俺はヤナギの言葉を白々しく聞き、考え込むように言葉を返す。