―――――ヤマモト



「オヤジ、何でわざわざこんなトコに?」


 新大久保駅から程近い、大久保通りのファミリーレストランで、二杯目の薄いコーヒーに砂糖を入れている時に、怪訝な面持ちのヤナギが到着した。


『・・・一人で来たよな?』


「オヤジが一人で来いって言ったんじゃないですか」


『・・・だよな。・・ところで、歌舞伎町の方で何かあったのか?随分とポンスケ共がウロチョロとしてやがるが』


「詳しくは分からないですけど、発砲事件らしいです。松木のオジキの若い衆から電話が有りました。警察が多いのもその所為でしょう」


『・・・そうか』


俺はコーヒーを適当に混ぜ、ゆっくりと啜り飲む。

ヤナギは相変わらず怪訝な面持ちで俺を眺めてる。


「・・・で、何なんです?こんな所に呼びつけて」


『いや・・大した事じゃねえんだが・・シノギを頂いたんだがな』


「頂いたって何を?」


『職安通りをちょっと入った満腹軒って知ってるよな?』


「あの汚い店が何か?」


まるで詐欺師に騙されないよう、その言葉尻を逐一メモするかのように、ヤナギは慎重に俺の話に耳を傾ける。


『アソコなぁ・・・美山のトコに借金あってな・・・』


「まさか?!」


勘の良いヤナギは、目を大きくして俺の顔を覗き込む。