―――――傭兵



『あっは、マジで動くのかよ』


バカオンナが運転席に潜り込んでから程なくして、エンジンが掛かり、タイヤが微妙に動き出した。

自動小銃の残弾もそろそろ尽きかけていた所だったので、正直助かった。


『なっ?!何やってんだよ?!』


バカオンナが突然トラックを旋回させ、トラックを盾にしていた俺は当然巻き込まれそうになり、慌てて避ける。


『くっそ!!バカオンナ気を付けろ!!』


俺は真横になったトラックの荷台をバンバンと叩き、バカオンナに怒鳴りつけるが、聞いてか聞かずかバカオンナはなおも旋回し、運転席のドアが俺の目の前へ来る。


『よし、バカオンナそこ開けろ』


「ごめん、ちょっと待ってて!!」


『なっ・・何?!オッオイッ!!』


バカオンナはトラックを急旋回させ、そのままバックし始めたかと思うと、砂煙と排気ガスを大きく舞い上げながらトラックを瞬く間に裏路地の奥へと進ませた。


『くっそ!!バカオンナ、テメエ!!』


バカオンナを怒鳴りつける声は、排気ガスと砂煙に虚しくかき消されるだけで、盾のトラックを失った俺の前には、十数人のゲリラ共がカラシニコフを構えている。


『チキショウ、あのバカオンナ、置き去りかよ』


俺は全速力で後退し離れて行くトラックに吐き捨て、目の前のカラシニコフを構えた素人ゲリラ共に溜め息を吐きながら、サイドポケットに残ってる最後の一個の手榴弾を投げつけ、無駄な足掻きの為に建物の陰に隠れる。