―――――京子



『ネェ?アナタ大丈夫?・・・じゃないわよね』


運転席の彼は、銃弾を首と耳に受けていた。

右手で押さえているけど、首の右側からは指の間を溢れるように血が流れ、右耳はほぼ原形を留めていなかった。

アタシの問い掛けに、虚ろに視線をくれたけど、既に呼吸する事に精一杯な感じだった。


『ゴメンナサイ、ちょっと車動かしたいの。場所借りるわよ』


アタシは彼には申し訳ないけど、強引に彼を引き寄せ、入れ替わりに運転席に自分をねじ込む。


「・・・ウゥッ!!」


入れ替わるのに彼を跨ぐ形になった時に、彼が痛みからか苦悶の表情を浮かべながら低く唸る。


『ゴメンナサイ!!・・・我慢して、助かる為なの』


なんとかハンドルの前に着座して、クラッチを踏み込み深呼吸してキーを回す。


『・・・フゥ・・良かったぁ・・』


キーを回すとスムーズにエンジンが掛かり、アイドリングの振動がハンドルに伝わってきた。


『まずは掛かった・・・問題は動くか?よね・・・』


アタシはギアをリアに入れ、踏み込んだクラッチをゆっくりと繋ぐ。


『よ・・よしよしよしイケる!イケる!!』


クラッチを徐々に繋ぐと、ギリギリと嫌な音がするものの、タイヤに動力が伝わりトラックが僅かに後退するのを感じる。


『流石はイスズ!!』


アタシは嬉しさのあまりハンドルにキスをする。


『さぁて、行くわよ~』


アタシはキスしたハンドルを今度は軽く叩き、気合いを入れる。

そしてアクセルを踏み込み、クラッチを繋ぎ、勢い良くトラックを旋回させる。