――ごめんなさい。みんな・・
アタシはここからじゃ見えない子供達に謝り、その瞬間の訪れる恐怖から目を閉じる。
僅かに吹き抜ける風が、アタシの首筋や頬を撫でる。
先ほどまで聞こえていたホテル方面の銃撃の音も、不思議と耳から消え、ただ風の音だけが耳元に集まった。
茅葺きの屋根をすり抜ける砂混じりの風が、不意に日本の風景を思い出させる。
アタシの閉じた瞼の裏側では、土手沿いを、生い茂るススキに囲まれた河川敷で、キャッチボールをする幼いアタシが映し出される。
ざわざわと秋風に揺られるススキの先で、力一杯にボールを放るアタシ、その様子を不安気に見守る母、そして不器用に弾むボールを笑いながら受け取る父。
――どうしてアイツの笑う顔が浮かぶんだろう?
アタシは瞼の裏に浮かんだ映像にやるせなさを感じ、やがてそれが言いようの無い後悔に姿を変えていく事に戸惑う。
――何?アタシ、何を悔やんでいるの?



