――啖呵切った手前、今更美山に謝るのも格好が悪すぎる。

体裁だけじゃ無え、義理も通らねえ。

――笑い話じゃ済まねえよなぁ・・・


「どうぞ」


俺が頭を痛めながらビールを流し込んでいる目の前に、オヤジがラーメンを持ってくる。

縁に中国風の龍が踊る、昔ながらの赤い丼に、細麺のラーメンが透明度の高いスープに沈む。

最近気取ったラーメンが多いが、俺は『中華そば』と言った感じの昔っぽい、こんなラーメンが好きだ。

――贅沢を言えばナルトなんかが浮かんでいると最高なんだが・・・


「ヤマモトさん?」


『ん?』


「本当にスイマセン」


俺がレンゲでスープをすくい、薄い琥珀色を味わおうとするとオヤジがそう言って深々と頭を下げる。

俺は『気にするな、何とでもなるさ』と言い、スープをすすり飲む。

想像した通りの味が口の中に広がる。

――ショボい味だ・・俺好みの安っぽいショボい味だ。