■第一章■
〈薄汚れた街〉


 愛染明王

梵名(サンスクリット語)をラーガ・ラージャと言う。

「ラージャ」は王であり、「ラーガ」とは赤、愛欲貪染の意味を持ち、愛欲煩悩がそのまま悟りにつながるものであることを表している。

又、一面六臂に弓矢をつがえた愛の仏(神)であり、その弓矢で人の心と心を結びつけると言われ、ギリシャ神話の『エロス』に通ずる面もある。