キクは縁側に腰掛け、セダにも座るように言った。

「その様子ですと、布団に入っても寝られないでしょう。せっかくですし、月見でもしませんか?」

セダはゆっくりキクの隣に腰を落とす。キクは、二人分のお酒をお猪口に入れた。

二人で並んで月を見上げる。セダはゆっくりとお酒に口をつけた。宴の時にも飲んだはずだが、酔いは全く回ってこない。

「カヤのことが好きなのですか?」

キクにもう一度訊かれ、セダは少し言うべきか悩む。言ってしまえば、別れがますます惜しくなってしまう。

「隠す必要はありませんよ。カヤに好意があることは、私でなくても気付きます」

「……わかりやすいということか?」

「はい、とても」

キクにからかうように言われ、セダは頭を抱える。そして頷いた。

「俺は、お前の妹にーーーカヤに惚れている。カヤの秘密だって知った」

「フジ族のことですか?」

「ああ。俺はその力に助けられた」