海賊と宝石の歌姫

「カヤ」

セダは恐る恐る声をかける。カヤの肩がびくりと揺れた。

「な、何でしょうか?」

どこか怯えた様子でカヤは訊ねる。広間で怒鳴ってしまったことで、カヤとの距離は前よりも遠くなってしまったのだろうか。セダは少し焦る。

「海の上での暮らしは慣れたか?」

セダが訊ねると、カヤはセダから目をそらして「……はい、みなさんとても親切にしてくださいます」と言った。

「……そうか、ならよかった」

カヤの手首には、セダがあげたブレスレットはつけられていない。気に入ってもらえなかったのだろうか、とセダは少し寂しさを感じながら歩き出す。

「そうだ、俺の部屋も掃除を頼む」

セダがカヤに言うと、カヤは「かしこまりました」と頭を下げた。

まるで、主人とメイドだ……。

セダだけでなく、船員たちはそう思った。



海賊アレスの船は順調に航海を続けている。今日も海は平和だ。セダは甲板から海を見つめていた。

「セダ、ベニーが近くにある港に寄ってほしいと言っていた。薬がもうないらしい」