確実にセダがわかっているのは、触れれば触れるほどカヤと離れられなくなるということだけだ。

まるで縛り付けられたかのように、セダは動けなかった。



カヤはセダから離れ、ただひたすら走る。やがて息が乱れ、足を止めた。

心臓がうるさいほどドクドクと音を立て、カヤは胸にそっと手を当てる。その刹那、堪えていた感情があふれ出し、カヤの瞳から涙となった。

「……ごめんなさい、セダさん……」

カヤはポツリと呟き、泣き続ける。涙は止めることができなかった。

ハナダに帰って来られたことは、カヤにとって嬉しいことだ。望んで国から離れたわけではない。これが一番望んでいた結末のはずだったのだが、カヤの心だけは「違う！！」と叫び続けている。

カヤの胸の中にあるのは、村に帰って来られた喜びと悲しみだった。うまくセダたちの前で笑えているか不安で、船にいた頃のカヤならしなかったことも行動に移す。動いている方が、悲しみを誤魔化せるからだ。