「ねぇ、死神さん。笑って。」

あいつにそう言われたのは、いつの事だっただろうか。半年前?いや、1年前か?はっきりと思い出せない。
だが、今でも思い出せるんだ。あいつの、生き生きとした表情は。
花が咲いたような笑顔も、驚いた顔も、苛立ってふくれた顔も、辛そうな泣き顔も。
この事だけは忘れていない。そしてこれからも忘れない。
俺に感情を与えてくれた、唯一無二の存在。
たとえこのまま、あいつとの記憶を、あいつの声を、あいつの存在自体を忘れ去ったとしても、あの表情だけは忘れない。
忘れてたまるか。